ゲノム・コンパニオン診断研究部門について

設置の経緯

本邦では成長戦略の柱の一つである健康・医療分野の取組みの強化を目指し,2013年に健康・医療戦略厚生労働省推進本部が設置され,医療分野の研究開発に関する総合戦略が策定されました.このなかでがんや認知症等の疾患領域等の重点化すべき「最先端の技術に係る取り組み」が示され,そのひとつとしてコンパニオン診断薬開発が盛り込まれました.一方米国では2015年に"Precision Medicine Initiative(プレシジョン医療構想)"の推進が発表されて以降,次世代シークエンス(NGS)技術を用いたがん患者の遺伝子異常を網羅的に検索するゲノム診断が急速に拡がり,これを受けコンパニオン診断においてもその技術が導入されました.本邦では,2017年より厚生労働省主導の多くの検討会でゲノム医療の在り方が本格的に議論されるようになり,診療における制度設計が提示されました.その頃よりNGS技術を用いた検査は遺伝子パネル検査と呼ばれるようになり,その診療上の運用形態として,ゲノムプロファイリング検査およびマルチプレックスコンパニオン診断に大別されるようになりました.2018年にはこれら2つの運用形態に対応したゲノム診断システムが相次いで薬事承認され,2019年には保険診療下での臨床導入がスタートしました.こうしたがん診療における遺伝子パネル検査への期待は今後も高まる一方,これを用いた臨床運用は,今後も検証・整理が必要となっています.

当部門はアカデミアとしては国内初となる「コンパニオン診断」を標榜した組織として2012年4月1日に寄附企業3社の支援のもと北海道大学病院内に設置されました.設置準備を開始した2011年当時,「コンパニオン診断」は本邦ではまだ黎明期にありましたが,当部門はこの重要性に早くから着目し,第1期事業(2012~2013年度)として,これに関わる研究・開発や臨床上の課題に先駆的に取り組んできました.上述のように,コンパニオン診断が我が国の健康・医療戦略のスコープに組み込まれてから以降は,急速に注目が高まりました.

第2期事業(2014~2018年度)では,こうした国内動向に呼応するかたちで,製薬分野,コンパニオン診断薬・医療機器開発分野,最新技術分野,受託事業分野,地域医療支援分野などへ研究事業の対象を拡大して分野横断型の企業参画体制を構築・産学連携し,企業や医療現場に横たわるコンパニオン診断や関連するゲノム診断領域の様々な課題に,寄附企業8社の支援のもと取り組んできました.さらに2017年10月からは,国内外の環境変化を鑑み,部門名をゲノム・コンパニオン診断研究部門へ改称し,両診断領域の研究事業の融合を図ってきました.

当部門の第3期事業(2019~2023年度)のスタートは,わが国における「ゲノム医療元年」の2019年となりました.2018年3月に国の第3期がん対策推進基本計画で方針が示されて以降,がんゲノム医療中核拠点病院等の指定,がんゲノム情報管理センターの開設,遺伝子パネル検査の薬事承認・保険適用,ゲノム医療従事者の人材育成等が,迅速に進められました.しかし本邦のゲノム医療提供体制は,いまだ完全なものではなく,すでに多くの課題を抱えています.こうした国内状況のなかで開始となった当部門の第Ⅲ期事業(2019~2023年度)では,山積するゲノム医療の課題の解決に向けた継続的な取り組みを行い,従来の標準治療薬の選択を行うコンパニオン診断に加え,広く治療に係る医学的判断に資するゲノム検査の適正実施と発展に繋がる活動を,寄附企業11社の支援のもと進めてまいります.

研究事業の運営体制

本研究事業は, 2019年4月に北海道大学病院内に設置された先端技術開発センター(Center for Development of Advanced Diagnostics; C-DAD)をはじめとする医療・ヘルスサイエンス研究開発機構(HELIOS)との連携を主軸として,中央診療施設等(病理部/病理診断科,検査・輸血部,がん遺伝子診断等)との研究開発連携,さらには下図のような幅広い連携を図り,運営を進めています.

現在のスタッフ

事業課題

 第3期研究事業では,第1期や第2期で顕在化した課題への取り組みとして,以下の2つのプロジェクト(PJ1およびPJ2)を設定し,精力的に取り組んでいます.とくにPJ2では,産学連携の共同研究を積極的に進め,研究の加速を図っています.

PJ 研究課題 課題の細目
1

(診療関係)
コンパニオン診断/ゲノム診断における診療上の課題の解決

  • コンパニオン診断およびゲノムプロファイリング検査で使用する診断法等に関する課題解決や,これら診断・検査における品質保証体制の在り方に関する検討.
  • がんゲノム診断に関わる診療従事者人材育成.
2

(研究開発関係)
次世代治療に対応した画期的な診断法の臨床研究・開発

  • 画期的なコンパニオン診断/ゲノム診断法の研究開発やそれにつながる臨床研究(先端診断技術開発センター[C-DAD]との連携).
  • これに担う臨床研究中核病院およびがんゲノム医療中核拠点病院の役割や産学連携・道内医療機関連携の在り方に関する検討,およびそれら連携の推進

当研究部門へのご支援

当研究部門の第3期は,現在以下の11社からのご寄附によって支えられています.

●第3期:11社
  • 株式会社エスアールエル
  • コニカミノルタ株式会社
  • サクラファインテックジャパン株式会社
  • ジェネシスヘルスケア株式会社
  • 株式会社ジェネティックラボ
  • シスメックス株式会社
  • 大鵬薬品工業株式会社
  • 株式会社ニチレイバイオシエンス
  • 合同会社みらか中央研究所
  • 株式会社モロオ
  • 株式会社理研ジェネシス
●第2期:8社
  • 株式会社キアゲン
  • コニカミノルタ株式会社
  • サクラファインテックジャパン株式会社
  • 沢井製薬株式会社
  • 株式会社ジェネティックラボ
  • 大鵬薬品工業株式会社
  • 株式会社理研ジェネシス
  • 株式会社モロオ
●第1期:3社
  • サクラファインテックジャパン株式会社
  • 沢井製薬株式会社
  • 株式会社モロオ

(五十音順)

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